被害者にも過失がある場合であっても、人身傷害保険に入っていれば,自らの過失分についても保険金を受け取ることができます。その意味で,人身傷害保険は非常に心強い保険です。
ところで,人身傷害保険の保険金が支払われると,人傷保険会社は,被害者の加害者に対する損害賠償請求を取得するのですが,どの範囲で代位取得するかについては,約款の解釈上,必ずしも明らかではありませんでした。
この点につき,平成24年2月20日の最高裁判決は、「被害者に保険金を支払った保険会社は、保険金請求権者に裁判基準額に相当する額が確保されるように、保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り、その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。」と判示し,この問題に決着をつけました。
この最高裁判決はいわゆる、いわゆる訴訟基準差額説によることを明らかにしたものです。この訴訟基準差額説は,被害者に有利な考え方なのですが,重要なポイントは,あくまでも「人傷保険金が先に支払われた場合」に訴訟基準差額説が採用されたに過ぎないということです。つまり,人傷保険金を先に取得するか,加害者からの損害賠償金を先に取得するかによって,最終的に取得できる総額が変わってくる可能性がありますので注意が必要です。