交通事故による怪我の診療と健康保険

 交通事故による怪我の診療においても,労災の適用がある場合等を除き(健康保険法55条),医療機関に第三者行為による傷病届を提出することにより健康保険は使用できます(昭和43年10月12日保険発第106号 厚生省保険局保険課長国民健康保険課長通知)。そして,健康保険が保険給付した場合は,健康保険が加害者に対する損害賠償請求権を取得することになります(健康保険法57条)

 もちろん,健康保険を使用しなくとも,治療費は基本的に加害者側の負担になりますので,被害者にとってはどちらでも構わないようにも思えますが,それでも健康保険を使用するメリットはあります。

 とりわけ被害者にも過失がある場合には,治療費にも過失割合に応じた自己負担分が生じます。そして,診療報酬は保険診療より自由診療の方が高いですから,被害者の過失割合が高ければ高いほど保険診療の方が被害者の負担も少なくなります。

 また,自賠責保険の保険金額は,傷害のみの場合120万円と決まっていますので,自由診療による高額な診療報酬が発生する場合,自賠責保険の保険金額を超えることもあります。そうすると,超過した部分については,加害者側(任意保険も含む)の負担となりますが,加害者側が任意保険に加入しておらず,資力がない場合には,事実上,被害者負担になる可能性がありますし,任意保険に加入している場合であっても,治療費以外の費目における任意保険会社との交渉に影響してくる可能性があります。

 

健康保険法

(他の法令による保険給付との調整)

第五十五条  被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費,入院時生活療養費,保険外併用療養費,療養費,訪問看護療養費,移送費,傷病手当金,埋葬料,家族療養費,家族訪問看護療養費,家族移送費若しくは家族埋葬料の支給は,同一の疾病,負傷又は死亡について,労働者災害補償保険法 国家公務員災害補償法 (昭和二十六年法律第百九十一号。他の法律において準用し,又は例による場合を含む。)又は地方公務員災害補償法 (昭和四十二年法律第百二十一号)若しくは同法 に基づく条例の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には,行わない。

  被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費,入院時生活療養費,保険外併用療養費,療養費,訪問看護療養費,家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給は,同一の疾病又は負傷について,介護保険法 の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には,行わない。

  被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費,入院時生活療養費,保険外併用療養費,療養費,訪問看護療養費,移送費,家族療養費,家族訪問看護療養費若しくは家族移送費の支給は,同一の疾病又は負傷について,他の法令の規定により国又は地方公共団体の負担で療養又は療養費の支給を受けたときは,その限度において,行わない。

 

(損害賠償請求権)

第五十七条  保険者は,給付事由が第三者の行為によって生じた場合において,保険給付を行ったときは,その給付の価額(当該保険給付が療養の給付であるときは,当該療養の給付に要する費用の額から当該療養の給付に関し被保険者が負担しなければならない一部負担金に相当する額を控除した額。次条第一項において同じ。)の限度において,保険給付を受ける権利を有する者(当該給付事由が被保険者の被扶養者について生じた場合には,当該被扶養者を含む。次項において同じ。)が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

 

  前項の場合において,保険給付を受ける権利を有する者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは,保険者は,その価額の限度において,保険給付を行う責めを免れる。