北名古屋市 矢澤法律事務所

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解雇期間中に他の会社から得た賃金

 解雇の有効性が争われる事案においてよく問題となるのは,解雇が無効であるとの判断がなされるまでの間の賃金の扱いです。この点,事後的に解雇が不当なものであったとの判断がなされた場合は,民法5362項前段の「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき」には該当しませんので,労働者は,解雇期間中の「反対給付」(賃金)を請求する権利を失わないとされています。

 では,解雇の有効性を争っている間に,他の会社で就労した場合はどうなるでしょうか。この点,民法5362項後段によれば,「自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。」とされており,文字通り解釈すれば,他の会社で就労したことによって得た賃金があれば全額控除されるとも解されます。

しかし,判例上は,「使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益(以下「中間利益」という。)を得たときは,使用者は,当該労働者 に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間利益の額を賃金額から控除することができるが,上記賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの 部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である。」,「中間 利益の額が平均賃金額の4割を超える場合には,更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(同条4項所定の賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解される」(最判H18.3.28)。とされています。したがって,解雇が後に不当なものであるとなった場合,労働者が解雇期間中に他の会社で就労した場合でも,不当解雇した会社は一定の賃金を支払わなければならないことになります。

 

民法

(債務者の危険負担等)

第五百三十六条  前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。

  債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

 

労働基準法

 

第十二条  この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。

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