相続人による預金口座の取引経過の開示請求

遺産分割の案件では,亡くなった被相続人と同居していた相続人と同居していなかった相続人との間には情報格差が存在することがあります。そのようなケースで,預金口座の取引経過について,相続人間で適切な情報開示がされない場合,金融機関に直接問い合わせることが考えられます。では,相続人の一人が,金融機関に対し,単独で被相続人の預金口座の取引経過を確認することができるでしょうか。

この点,判例上も不明確な状態が長年続いていましたが,平成21年に最高裁判決が, 1 金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負う(民法645条, 656条,666条)。

2 預金者の共同相続人の一人は,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる。

と判示したことによって決着がつきました(民法252条,264条,898条)。

 

ただし,金融機関によっては,上記の最高裁判決後も,相続人間のトラブルに巻き込まれることを過度におそれて,相続人の一人から単独で預金口座の取引経過の開示請求を容易に受けつけないこともありますので,そのような場合には専門家に相談することをおすすめします。

 

最高裁平成21年1月22日判決

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/210/037210_hanrei.pdf