行方不明の賃借人に対する対応

賃料を長期間滞納している賃借人が建物の明け渡しをしないまま行方不をくらませてしまった。賃貸人にとっては非常に悩ましい場面です。賃借人との契約の際の審査を厳格に行って,そのようなことをする賃借人とは契約しないというのが理想的ですが,現実問題そのような事態が起こってしまうこともあるでしょう。

 

 このようなとき賃貸人としてまず頭に入れておかねばならないのは,「自力救済禁止」という原則です。すなわち,賃借人が長期間行方不明になったからといって,裁判手続きによらずして,勝手に鍵を開けて室内の残置物を処分したり,鍵を交換して賃借人が使用できなくしてしまうと,後日,トラブルが生じるリスクがあります(著名な判例として,浦和地判平成6年4月22日)。

 

 したがって,本来は,裁判所に訴訟を提起して,判決をとって明渡しの強制執行を申し立てるというのが最も手堅い方法ということになります。もっとも,そのためには多くの時間と費用がかかります。そこで,次善の策として,可能な限りの所在調査を尽くしたうえで,残置物の写真撮影をしたうえ,目録を作成し,残置物を処分(可能なら別の場所で保管)して,明け渡しを実現せざるをえない場合もありえます。ただし,上記のとおりリスクを伴う方法であることは認識しておくべきでしょう。