会社法の規定によれば,定款で株券を発行する旨を定めない限り,株券を発行する必要はありませんが(会社法214条),会社法の施行前から存在する会社で,定款に株券を発行しない旨の定めがない会社は、株券発行会社とみなされます(整備法76条4項)。
しかし,会社法215条によれば,公開会社でない株券発行会社は、株主から請求があるまでは、これらの規定の株券を発行しないことも可能です。実際,全ての株式について譲渡制限の付けられた公開会社でない会社においては,株券を発行していない会社も多いようです。通常は株券を発行していないからといって,特に問題が生じることはありませんが,会社法には株券不発行会社への移行手続きも用意されています(会社法218条)。
問題が生じうるのは,株式譲渡の場面です。株券発行会社では,株式の譲渡においては株券の交付が効力発生要件となっています。また,株券の発行前にした譲渡は,会社との関係では効力を生じない,ともされていますが(会社法128条),会社が株券の発行を不当に遅滞している場合には,会社は株式譲渡の効力を否定できないとされています(最判昭和47年11月8日)。
会社法
(株券発行会社の株式の譲渡)
第百二十八条 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。
(株券を発行する旨の定款の定め)
第二百十四条 株式会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができる。
(株券の発行)
第二百十五条 株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならない。
4 前三項の規定にかかわらず、公開会社でない株券発行会社は、株主から請求がある時までは、これらの規定の株券を発行しないことができる。
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
(株式会社の定款の記載等に関する経過措置)
第七十六条
4 旧株式会社又は第六十六条第一項後段に規定する株式会社の定款に株券を発行しない旨の定めがない場合における新株式会社の定款には、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定めがあるものとみなす。
最判昭和47年11月8日