財産分与は,離婚後2年以内に請求しなければならないとされていますが,その根拠となるのは民法768条2項です。もっとも,条文上「家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる」のが2年以内と規定されているのであって,当事者間の合意によって財産分与をすることは,離婚後2年以上が経過してからでも可能であると解されます。
実際に,離婚後2年以上が経過してから財産分与が必要になるケースとしては,離婚時点では,住宅ローンの関係で名義変更ができなかった夫名義の自宅に,離婚後も妻が住み続けて実質的に住宅ローンを支払い続けたというような場合がありえます。住宅ローンの支払いが終了した後(離婚後2年以上が経過してから)名義変更をしたいといった場合に,上記の財産分与の期限の問題が生じます。財産分与でなければ贈与ということになり,贈与税のリスクが生じるためです。
そのようなケースでは慎重な対応が必要ですので,専門家に相談することをおすすめします。
(財産分与)
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。