北名古屋市 矢澤法律事務所

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散骨について

日本においては人が死亡した場合,火葬して遺骨をお墓に納めるのが通常とされてきました。しかし,近年では様々な事情により,遺骨の処理についても多様化してきており,最近耳にすることが多くなったのは,永代供養や散骨です。また,最近増加してきたというものではありませんが,遺骨を仏壇に納めて手元においておくことも珍しくありません。

 ここでは散骨にまつわる法律を確認しておきたいと思います。

まず,一応の確認ですが,火葬は市町村長の許可を得て行うこととされ(墓地,埋葬等に関する法律5条1項),また,都道府県知事の許可を受けた火葬場においてなされることとされています(同法4条2項)。

 

 そして,火葬をすれば遺骨が残るわけですが,残った「焼骨」については,「焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。」との規定があります(同法4条1項)。

 墓地というのは,「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあつては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域」(同法2条5項)のことを指しますが,これはあくまでも「埋蔵」する場合に限定されています。つまり,「埋蔵」することなく,いわゆる散骨をしたり,あるいは自分で保管する場合については特にこの法律には規定がありません。

 

 そうすると,手元供養や散骨という方法には墓地,埋葬等に関する法律上は問題がないといえそうですが,散骨に関しては,形式的には「遺骨」を「遺棄」するという面があるため,刑法190条に死体損壊罪に該当するかが一応問題となりえます。この点は,1991年に法務省が「節度をもって行われる限りは違法性はない」という主旨の見解を非公式に発表したとされています。非公式見解ということで,法務省が本当にそのような見解をとっているのか確認がとれず,真偽のほどは定かではありませんが,弁護士の立場からしてもおおむねそのように解するほかはないだろうと思います。刑法190条が明文で「遺骨」という文言を用いていることからすれば,あらゆる散骨が刑法190条に該当しないとは言い切れるものではありません。しかし,刑法190条の保護法益が「国民の宗教的感情及び死者に対する敬虔・尊崇の感情」とされていることからして,また常識的にいっても,散骨が死者の弔いとしてなされるのであれば,そこに刑事責任を問うべき理由はありません。問題となりうるのは,形式的には死者の弔いであるが,実質的には死者に対する冒とくではないかと疑われるような場面に限られるでしょう。

 いずれにせよ,この問題は法解釈の問題であり,最終的には行政庁たる法務省が判断すべきことではなく,実際に散骨の事案が起訴されて,司法の場で判決が下されるまではっきりしないところでしょうが,おそらくそのようなケースは今後も発生しないものと思われます。

 

墓地,埋葬等に関する法律

第四条  埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。

2  火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。

刑法

(死体損壊等)

第百九十条  死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

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