前回は,死亡保険金が相続においてどのように扱われるかを概観しましたが,今回は死亡退職金についてです。死亡退職金は,死亡保険金とはかなり性質が異なり,具体的な事案に応じてケースバイケースであるといえます。
一般的には,賃金の後払いとしての性質を重視すれば,相続財産性を肯定する方向に傾きますし,遺族の生活保障としての性質を重視すれば,相続財産性を否定する方向に働きます。
また,死亡退職金に関する支給規定があれば,規定の文言を重視して死亡退職金の性質を検討することになり,支給規定がない場合では従来の支給慣行や支給の経緯等を勘案して個別的に相続財産性を検討すべきともいわれます。
実際の裁判例をみると,相続財産性が否定され,受給者固有の権利と判断されたケースが多いように思われますが(例えば,特殊法人の職員につき最高裁昭和55年11月27日判決,地方公務員の死亡退職手当につき最高裁昭和58年10月14日判決,私立大学の職員につき最高裁昭和60年1月31日判決等),例えば同族会社の代表者の死亡の場合等は,相続財産性が肯定されてもよい事案があるように思われます(一部肯定した事案として東京地裁平成26年5月22日判決)。