北名古屋市 矢澤法律事務所

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解雇予告と即時解雇

解雇については,「使用者は,労働者を解雇しようとする場合においては,少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は,三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」(労基法20条1項)という規定がありますが,当然ながら,全ての会社が解雇をする際に,この規定を念頭において,解雇予告(労基法20条1項本文前段)と即時解雇(労基法20条1項本文後段)を明確に使い分けているわけではありません。

この点,即時解雇のためには「三十日分以上の平均賃金」,すなわち解雇予告手当を支払う必要がありますが,予告手当は解雇申渡と同時に支払わなければならない(昭和23年3月17日 基発第464号)とされていますので,予告手当の支払いなく即時解雇をすることはできません。しかし,最高裁は「使用者が労働基準法二〇条所定の予告期間をおかず,または予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合,その通知は即時解雇としては効力を生じないが,使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り,通知后同条所定の三〇日の期間を経過するか,または通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは,そのいずれかのときから解雇の効力を生ずる」と判示していますから(最高裁昭和35年3月11日判決。なお,行政解釈(昭和24年5月13日基収1483号)も同様の見解),即時解雇のつもりで行った解雇通知を解雇予告とみることはできるわけです。

 もっとも,このように解した場合,解雇通知以後,労務提供を行っていない労働者が30日分の賃金ないし解雇予告手当を請求できるのかどうかについての理論上の問題が生じます。

 この点については,東京地裁昭和51年12月24日判決にみられるように「労働者が右のように労務提供を断念するにいたったのは、使用者が労基法二〇条の規定に違反して解雇予告手当を支払わないにも拘らず即時解雇と受けとられる意思表示をしたが故であり、しかも、使用者は結果において右法条に違反する即時解雇の状態を実現させたことになるのである。そうとすれば、右法条により即時解雇するにあたって解雇予告手当支払義務を課せられている使用者は、右のような状態のもとに雇用契約が終了した時点において、労働者に対し解雇予告手当を支払うべき公法上の義務を具体的かつ確定的に負担するにいたるもの」として解雇予告手当の請求権を認める考え方がある一方,行政解釈(昭和24年7月27日 基収1701号)にみられるように会社は平均賃金の百分の六十以上の休業手当(労基法26条)を払えば足りるとする考え方もあり,現在に至るまで明快な結論は出ていません。

 

労働基準法

第二十条  使用者は,労働者を解雇しようとする場合においては,少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は,三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し,天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては,この限りでない。

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