業務委託契約とは?

 「業務委託契約とは何ですか?請負契約と何が違うのですか?」という質問がありました。少し考えさせられるところがありましたので記事にしてみます。

まず率直にいって,冒頭の問いに対して端的に一言で簡潔に答えることはできません。誤解をおそれずにいえば,素人の質問といえますが,ただ,それだけに考えさせられるところがあるわけです。この質問に対しては,敢えて質問で返してみたいと思います。

 

Q1 契約書のタイトルの意味は?

 契約書のタイトルは無意味とまではいいませんが,一般に考えられているほど大きな意味を持ちません。極端なことをいえば,タイトルが「売買契約書」となっていても,お金の貸し借りについて記載されているのであれば,それは金銭消費貸借契約書です。

 

Q2 契約の種類を区分する意味は?

 契約の種類を区分する意味は何でしょうか?区分のための区分では意味がありません。契約の呼び名を変えなければならない必然性がどこにあるのでしょうか?

 答えは,当該契約関係から紛争が生じた場合に,いかなる法律が適用されるかを確定させるため,ということです。

 例えば請負契約であれば,民法632条から642条が適用される,ということになりますし,雇用契約であれば623条から631条が適用されるほか,各種の労働法規も適用されることになります。

 では「業務委託契約」だとどうなるかということですが,業務委託契約というのは,請負契約や雇用契約といった民法上の典型契約は異なり,特に法律上の規定がありません。だからといって,民法等の縛りを受けないのかといえば決してそういうことではありません。「業務委託契約」というタイトルを冠していても実質が請負契約であれば,民法632条から642条が適用されるのです。ということは,ある契約が請負契約に区分されるということ,その契約から紛争が生じた場合には民法632条から642条を適用しましょう,ということになりますから,意味のある区分ということになります。しかし,ある契約が業務委託契約であるという区分を(恣意的に)したとしてもそれだけでは,いかなる法律が適用されるかが判然としないため,その区分には意味がないということになります。いわば区分のための区分に過ぎないわけです。

 

Q3 紛争となる具体的な場面をイメージできるか?

 契約のタイトルをめぐるこのような誤解ないし理解不足は,おそらく紛争の具体的な場面をイメージできないことから生じるものだと思います。例えば,労働契約であれば労働基準法が適用されますから時間外手当が請求できますが(労働基準法37条),請負契約の場合は労働基準法の適用はなく時間外手当の請求はできません。

 しかし,労働契約か請負契約かという判断に際して,契約書のタイトルが決定的な意味を持つということはありません。契約の実体から判断して,労働契約なら労働契約として扱われることになりますし,請負契約なら請負契約として扱われることになります。