建物賃貸借契約の保証債務の範囲

建物の賃貸借契約においては,借主側に連帯保証人をつけるのが通例です。これは主には借主の賃料滞納に備えるためのものですが,借主の賃料滞納額が,連帯保証人の想定を超えてしまうことがあります。

本来は,2,3か月の滞納があった時点で,賃貸人としては明渡しを求めるなどの手段をとるべきですが, 滞納状態のまま年単位で放置されてしまうこともあります。このような場合,滞納額も数百万円ということになってしまうことも珍しくないわけですが,この場合に連帯保証人は全額の支払い義務を負うのでしょうか。

まず,「期間の定めのある建物の賃貸借においで、賃借人のために保証人が賃貸人と保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解すべきである」とされています(最高裁平成9年11月13日判決)。

 逆にいえば,「反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情」があれば,更新後の滞納分については連帯保証債務を負わないという解釈も成立しえます(東京地裁平成10年12月28日判決等)。

 また,賃貸人側が賃料滞納額が増大していくのを放置していて,適宜連帯保証人に通知するなどの措置を講じていなかった場合には,連帯保証債務の履行を請求することが権利の濫用として排斥される可能性もあります(広島地裁福山支部平成20年2月21日判決)。