複数の債務者が連帯債務者として融資を受けることがあります。例えば,2人の債務者が1億円の融資を受けて共同で事業を行う場合に,5000万円ずつ借り入れるのではなく,1億円を連帯債務として借り入れるということがあります。この場合,債務者双方がそれぞれ債権者に対し1億円の債務を負うということになります。債権者としては,債務者のどちらかが資力を喪失したとしても,資力のある債務者から1億円全額を回収できるということになります。
債務者Aと債務者Bがいたとして,債権者Aが返済しなかったとすると,債務者Bは,債務者Aの分まで返済しなければならないことになります。もっともそのままでは債務者Bが借入時に想定した以上の負担が生じてしまうため,債務者Bは債務者Aに対して,自分が余分に返済した分を求償することができることになっています(民法442条)。
ただし,下記の条文の文言を読んでみるとわかりますが,具体的にどのような場合に,どれくらいの求償請求が可能かという点については,条文上明確ではありません。
条文の文言上まず問題となるは,「各自の負担部分」という箇所ですが,この点については,債務者間で特約がある等の特殊事情が無い限りは,平等の割合と考えるべきとされています(大審院第一民事部判決 大正3年(オ)第67号 損害賠償請求ノ件 大正3年10月29日)。
上記の例では,負担部分が平等とすれば,債務者ABとも5000万円ずつの負担部分があることになりますが,例えば,債務者Aがいくらも支払わないうちに,債務者Bが4000万円支払ったという場合に(つまり,債務者Bの負担部分を額としては超えていない場合),債務者Bは債務者A求償請求できるのでしょうか。
この点は,争いがあるところですが,求償請求可能とされた判例があり(大審院第二民事部判決 大正6年(オ)第267号 代償金請求ノ件 大正6年5月3日),多数説もこれを支持しています。
(連帯債務者間の求償権)
第四百四十二条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。