北名古屋市 矢澤法律事務所

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夫婦間の相続

現行民法では,配偶者は常に法定相続人となりますが(民法890条),これは配偶者が生きていることが前提となっています。

 

 離婚における財産分与の場合は,いわゆる二分の一ルールが定着していますし,分与の対象となる財産は,婚姻後に夫婦で形成した財産に限られます。逆に言えば夫婦で形成していない財産,例えば,婚姻前にすでに形成されていた財産,婚姻後であっても相続によって取得した財産などは財産分与の対象外となります。したがって,婚姻期間の長短が,財産分の対象となる範囲にも大きく影響することとなります。

 

 ところが,相続においては,被相続人に子がいない場合,配偶者の法定相続分は三分の二となりますし,被相続人に子も親もいない場合には配偶者の相続分は詩文の酸となります(民法900条)。しかも,この場合は,夫婦で形成した財産かどうかは関係ありませんから,婚姻期間の長短に関わらず,全ての財産が相続の対象となります。

 

 もちろん,離婚と相続とでは場面が異なりますから,上記の違いが直ちに不合理であるということにはなりませんが,多少の違和感を感じるケースもあります。

 

 例えば,十億円の資産を有する夫と全く資産のない妻という子なし夫婦がいたとし,共に両親は健在であるとします。このような夫婦で,仮に夫が先に死亡したとすると,妻は夫の財産の三分の二(6.6億円)を取得することになります。そして,その後妻が死亡すれば,6.6億円の財産は妻側の遺族に相続されていくことになります。

 

 これに対して,夫より妻が先に死亡した場合は,妻が夫の財産を取得することはありませんし,その後夫が死亡したとしても,当然ながら妻側の遺族に夫の遺産が継承されることはありません。

 

 このように,夫婦間の相続は,死亡の順序によって,非常に大きな差異が生じることがあります。死亡時期のずれが何年もあればそれでもさほどの違和感は生じないかもしれませんが,例えば死亡時期が五分早いかどうかで結果が異なってくる場合もあり得ますから,そうなると本当にそれが妥当な制度なのかと思わなくもありません。

 

 ちなみに,死亡の順序が不明な場合,民法32条の2により同時死亡の推定が働き,夫婦間の相続は生じないことになりますが,事案によっては,本当は同時死亡ではないと思われるけれども,死亡の前後が立証できないため同時死亡として扱わざるを得ない場合などもありうるでしょう。そのような場合は,死亡の前後を立証できる証拠の有無で,夫婦間相続が発生するか否かが決せられるということになりますが,そのような取り扱いでよいのかどうかも議論の余地があるのではないかと思えます。

 

民法

(配偶者の相続権)

第八百九十条  被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

 

(法定相続分)

第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

 

第三十二条の二  数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

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