どうしても遺産分割協議がまとまらないときの対処法

遺産分割協議というのは,ときに非常にやっかいなもので,相続人全員が合意しないことには成立しません。つまり,相続人の1人が強硬に「全ての遺産は自分のものだ」と主張し続ければ,遺産分割協議が成立する余地はないわけです。法的に見て正しいかどうかは,あくまでも紛争が裁判所に持ち込まれた場合に意味を有するのであって,裁判所「外」での遺産分割「協議」においては,相続人全員が合意できるかどうかが全てなのです。

では,どうしても遺産分割協議がまとまらない場合には,いかに対処すべきでしょうか。正攻法は,紛争を裁判所に持ち込むとことです。裁判所においても,まずは話し合いでの解決が推奨されえますから,調停を行うことになります。ただし,調停も結局のところ,裁判外の協議と同様に,相続人全員の合意がなければ成立しませんから,最終的には審判で決着が着くことになります。

 

 ただし,注意しなければならないのは,裁判所の審判においては,預金が審判の対象外となるということです。なぜそのようになっているかといえば,預金は可分債権と解されていて,相続開始時点で既に法定相続分に従って分割されているため(最判昭和29年4月8日),裁判所で改めてその分配方法を定める必要がないためです。

 

 逆にいえば,預金だけであれば,裁判所の審判手続きを経なくても,金融機関との交渉次第で,遺言も遺産分割協議書も裁判所の審判書も何もなくても,法定相続分の限度では相続手続きが十分に可能です(ただし,ゆうちょ銀行の定額貯金等の例外があります)。事情によっては,他の相続人の印鑑がなくても,代表相続人として預金全額の相続手続きに応じてくれることもあります。

 

 しかし,上記のような預金が可分債権であることを前提とした法解釈は,最高裁による判例変更により,近々見直される可能性が高いといわれています。判例変更がなされるとすると,実務に与える影響も非常に大きなものになりそうです。